活動報告

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防衛大臣離任

2018年10 月 4日 (木) 

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離任挨拶(全文) 

 この度、防衛大臣を離任するに当たり、これまで私を支えてくれた全国の自衛隊員諸君に対し、挨拶を申し述べます。

 昨年の着任以来、1年2か月を振り返りますと、着任直前には、南スーダン日報問題が発生し、当時の大臣・事務次官・幕僚長が辞任する深刻な事態となっており、防衛省・自衛隊に対する国民からの信頼回復が急務でありました。
 また、着任直後より、我が国上空を飛び越えるなど、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が繰り返され、また、過去最大規模の核実験が強行され、日夜、緊張が続きました。
 さらに、中国潜水艦が尖閣諸島接続水域を潜没航行する事案が発生したほか、自衛隊や米軍の航空機事故が続き、また豪雨や地震などの大規模災害も頻発し、日々、対応に追われました。

 私が防衛大臣を務めましたのは2度目でありますが、以前にもまして、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなっており、防衛省・自衛隊に求められる対応と責任がより一層高いものとなっている現状を、身をもって痛感する日々でありました。
 このような厳しい環境にあって、全国の二十五万人の隊員諸君は、日々、私の指揮に忠実に従い、多様な任務に全力で当たり、困難な職務を全うしてくれました。前回とあわせ、1000日以上に及んだ大臣在任中、私を支え続けてくれた全国の隊員諸君一人一人に、心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、自衛隊の最高指揮官たる安倍晋三内閣総理大臣の下、国民の生命・財産、領土・領海・領空を断固として守り抜く決意で職務に当たってまいりました。その際、防衛大臣の務めとして、何より大事なこととして、他国が我が国に対し武力を用いた行動を起こすことのないよう、「抑止力」を高めていくこと、そして万が一いかなる事態が発生しても自衛隊が国民を守ることができるよう、「対処力」の向上が重要との考えで各種の施策に取り組んでまいりました。
 このたびの離任に当たり、今後とも諸君が心掛け、取り組んで頂きたい点について、申し上げたいと思います。

 一点目は、我が国自身の防衛努力の継続です。
 国の安全を守るため、もっとも重要なことは、他の誰かに頼るでもない、自らの身は自らが守るという意思と能力を持つこと、すなわち、我が国自身の防衛努力です。そして、防衛力は、環境の変化に応じ、絶えず有効なものとなるよう環境に適応させていく必要があります。
 本年には、全国規模での事態に対し、陸上自衛隊がより迅速かつ柔軟に運用できるよう陸上総隊を新設するとともに、水陸両用作戦能力を獲得するため、水陸機動団を新設致しました。こうした陸上自衛隊の大改革により、数千にも及ぶ島々を含め我が国を最後まで守り抜くという断固たる意思と能力を示すことができたと思います。
 しかしながら、我が国を取り巻く安全保障環境は、現在の防衛大綱の策定時の想定よりも格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。いまや従来の延長線上ではなく、真に必要な防衛力のあるべき姿を考える必要があります。
 特に、防衛における宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の活用が死活的に重要になっており、領域を横断したクロス・ドメインでの作戦を実現できる体制の構築が必要です。
 現在、新たな防衛大綱の検討を進めていますが、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くことができる防衛力の整備に向け、引き続き全力で取り組んでいただきたいと思います。

 二点目は、日米同盟の強化への取組です。
 日米安全保障体制は、我が国の安全保障の基軸であり、厳しい情勢の中、日米同盟の強化は一層重要な課題となっています。
 このため、私自身、カウンターパートであるマティス米国防長官と12回の会談を行い、北朝鮮問題などの課題について、常に緊密に認識と方針をすり合わせてまいりました。また、インド太平洋軍司令官との会談を重ねるなど、地域を担当する米軍との緊密な連携にも努めてまいりました。
 自衛隊と米軍の協力の現場においても、昨年、米空母3隻が初めて日本海に集結して日米共同訓練を実施したとともに、平和安全法制により可能となった米艦艇や航空機の警護を実施し、目に見える形で日米協力を深めることができました。
 このほか様々な分野で日米共同訓練が行われており、今後も取り組みを進め、ガイドラインの実効性を確保し、日米同盟の抑止力・対処力の強化に努めてほしいと思います。
 また、同時に、日米同盟の抑止力を維持しつつ、沖縄をはじめとする地元の負担軽減を着実に進めるよう努めて下さい。

 三点目に、関係諸国との安全保障協力を積極的に進めてほしいと思います。
 グローバルな安全保障上の課題を解決し、安全保障環境を改善するためには、基本的価値を共有する国々との安全保障協力を推進することが重要です。
 私自身、在任中、スリランカやエストニアを防衛大臣として初めて訪問するとともに、インド、豪州、フィリピン、ベトナムなどのインド太平洋諸国や、英国、ドイツ、イタリアなどの欧州諸国の国防大臣と会談を行い、フランス、カナダとのACSA協定を署名するなど、関係強化に努めてまいりました。
 こうした結果、北朝鮮による安保理決議違反の「瀬取り」行為に対して、国際社会で協力した監視が実現しており、自衛隊の艦艇、航空機や米軍による監視に加え、豪州、カナダ、ニュージーランドが哨戒機を我が国に派遣するとともに、英国海軍の艦艇も我が国周辺海域で情報収集を行ってくれました。
 また、ジブチを拠点とした海賊対処行動は、我が国の生命線であるシーレーンの安全確保にとって極めて重要な取組です。「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下、関係国と連携し、シーレーンの安全確保に引き続き貢献してもらいたいと思います。

 以上申し述べましたように、防衛省・自衛隊に求められる役割は質・量とも、拡大しており、自衛隊の活動現場における隊員諸君への期待は一層高くなっています。このため、私は、在任中、できるかぎり、隊員諸君が活動する現場に赴き、実情把握に努めてまいりました。
 洋上で弾道ミサイルへの警戒に当たるイージス艦を視察したのを皮切りに、常続的に警戒監視に当たる離島のレーダーサイトや哨戒機部隊、常に危険と隣り合わせのスクランブルに臨む戦闘機部隊、生活環境が厳しい場所でも弛まず沿岸監視を続ける情報部隊など、24時間365日、今この時も休むことなく任務にあたる様々な部隊を直接訪れ、不屈の精神で任務に臨んでいる隊員諸君の姿を視察することができました。
 頻発した災害の現場においては、猛暑の中、泥をかき出し行方不明者を捜索する隊員、自ら被災しながらも近隣住民を助ける入隊したばかりの学生隊員、冷房のない宿営地を拠点に被災者への支援を続ける隊員、撤収後も直ちに次の出動に備えて機材整備にあたる隊員など、勇気と真心、そして自己犠牲の精神で災害派遣活動にあたる多くの隊員たちを目の当たりにしました。
 この他、極寒の中で黙々と除雪作業に当たる隊員や、派遣部隊の経由地で燃料補給に当たる隊員、派遣隊員の留守を預かり、残された家族を支援する隊員、小さなほころび一つも見逃さず落下傘を整備する隊員、活動中の熱中症を防ぐため補給剤を整備・補給する隊員など、様々な形で仲間の任務を支援する多くの隊員たちの活動を直接見て、話を聞くことができました。
 こうした視察のため、時には休日返上で、準備に当たってくれた多くの方々にも感謝を申し上げたいと思います。
 視察に訪れた現場において、私は、任務に当たる隊員を激励するとともに、隊員の努力と苦労を踏まえ、より効率的な任務の実施と勤務環境の改善を指示してまいりました。防衛力整備や運用を担当する幹部諸君におかれては、引き続き、部隊の活動現場の実情を常に正確に把握するよう努めるとともに、現場の隊員の努力と苦労が報われるよう、真剣に計画の策定に当たって頂きたいと思います。

 こうした現場の姿からも分かるように、自衛隊は、最前線から後方部隊に至るまで、隊員が互いに支え合い、組織として一体となることによって、真の力が発揮されます。防衛省・自衛隊には、陸・海・空、中央と部隊、自衛官と事務官・技官、様々な職種などが存在しますが、こうした区分が壁となることなく、常に風通しをよくし、組織が一致団結することが能力発揮の大前提です。仲間同士が助け合い、支え合うことによって、困難な任務の完遂が可能になることを決して忘れないで下さい。
 もう一つ忘れないで頂きたいことは、自衛隊の活動には、常に国民の理解と支持が不可欠であるということです。日報問題の発覚は、文書管理や情報公開といった基本業務をしっかりと行い、国民への説明責任を果たすことの重要性を改めて認識する機会となりました。最前線で厳しい任務に当たる隊員たちが国民から勝ち得た信頼を、二度と再び損なうことのないよう、引き続き再発防止策の徹底に努めて下さい。

 本日をもって、私は防衛省を離れますが、私は、これからも、一国会議員、一国民として、国を守るという崇高な任務に当たる隊員諸君の活躍に常に思いを馳せ、見守り、支え続けてまいります。そして、いつの日も、いかなる場合も、隊員諸君と共にあり続けることを固く誓います。
 最後に、厳しい環境の中、私を支え続けてくれた全ての隊員諸君に、改めて心からの感謝を申し上げますとともに、諸君のますますのご健勝とご活躍をお祈りし、私の挨拶といたします。

 今回は笑顔で終わりたいと思いましたが、どうも無理なようであります。

 全国の隊員諸君、皆さんと共に国を守れたことを誇りに思います。いつも支えてくれてありがとう。これからも我が国の防衛をよろしくお願いいたします。

平成30年10月3日
防衛大臣 小野寺 五典